【2026年版】タイ輸入の在庫管理の実務 – タイ輸入特有の発注サイクル・リードタイム管理

タイ輸入の在庫管理イメージ

前回の記事で、中国輸入経験者がタイ輸入へ参入するためのステップをご紹介しました。その中で「テスト販売で月に安定して10個以上売れる商品が見つかったら、本格仕入れに移行します。ここからは中国輸入と同じ『データに基づいた在庫管理』の世界です」とお伝えしました。

しかし実際に本格仕入れに移行すると、最初にぶつかるのが「在庫管理」の壁です。中国輸入と同じ感覚で発注すると、在庫切れで販売機会を失うか、過剰在庫でキャッシュが寝るか、どちらかに陥りやすくなります。

なぜか? それはタイ輸入と中国輸入ではリードタイムの構造そのものが異なるからです。

この記事では、タイ輸入特有のリードタイム構造を分解し、在庫切れも過剰在庫も起こさないための発注サイクルの設計方法を、具体的な数字と計算例を交えて解説します。


目次

タイ輸入のリードタイム構造を理解する

タイ輸入のリードタイム構造

在庫管理の第一歩は、発注から商品がお客様に届くまでの全工程と所要日数を把握することです。タイ輸入のリードタイムは、大きく分けて以下の工程で構成されます。

リードタイム全体像(発注〜FBA納品)

工程 内容 航空便の目安 船便の目安
① 発注・確認 サプライヤーへの発注、仕様確認、入金 2〜5日 2〜5日
② 生産・製造 商品の製造・加工(ロットにより変動) 7〜21日 7〜21日
③ 検品・梱包 品質チェック、輸出梱包 2〜5日 7〜14日
④ 国際輸送 タイ→日本 3〜5日 14〜21日
⑤ 日本側通関 輸入通関・関税支払い 2〜5日
合計 約14〜36日 約32〜66日

ポイントは、国際輸送と検品・梱包以外の工程は航空便も船便もほぼ同じということです。船便の場合はコンテナ単位での輸出梱包や混載便への積み合わせ準備に時間がかかるため、検品・梱包工程が長くなります。

実務上の目安: 航空便なら約1〜2ヶ月、船便なら約1.5〜2.5ヶ月をリードタイムとして見積もっておくと安全です。


中国輸入とのリードタイム比較

中国輸入に慣れている方は、「発注から2〜3週間でFBAに届く」という感覚が身についているでしょう。タイ輸入では、同じ感覚でスケジュールを組むと確実にズレます

リードタイム比較表

工程 中国輸入(航空便) タイ輸入(航空便) 差の要因
発注・確認 1〜2日 2〜3日 タイは確認に丁寧な傾向、時差も影響
生産・製造 3〜7日 7〜21日 手仕事・小ロット生産が多く時間がかかる
検品・梱包 1〜2日 1〜2日 ハンドメイド品は個体差チェックに時間要
国際輸送 2〜3日 3〜5日 距離・便数の違い
合計目安 約7〜14日 約14〜31日 タイは中国の約1.5〜2倍

※上記はOEM注文(新規生産)を想定したリードタイムです。リピートオーダーや既製品の仕入れでは、サプライヤーが在庫を持っている商品を選ぶなどの工夫により、生産・製造工程を大幅に短縮できる場合があります。特に既製品の在庫買いであれば、中国輸入に近いスピード感での仕入れも十分可能です。

なぜタイ輸入のリードタイムは長いのか?

主な理由は3つあります。

  1. 手仕事・少量生産が中心: タイの工場やアトリエは、中国のような大量生産ラインではなく、職人が手作業で仕上げるケースが多い。品質は高いが、生産スピードは遅い
  2. 小ロット対応の裏返し: 「10個からOK」という柔軟さは、裏を返せば大量生産の仕組みが整っていないということ。100個の発注でも、10個ずつ手作りするイメージ
  3. コミュニケーションの速度: 中国のアリババ系サプライヤーはチャットで即レスが多いが、タイのサプライヤーは返信に1〜2日かかることも珍しくない

このリードタイムを前提にした発注サイクルを設計しないと、在庫管理は破綻します。


発注サイクルの設計方法

発注サイクルの設計方法
安全在庫・発注点・発注量を数字で管理する

リードタイムの構造を理解したら、次はいつ、何個発注するかを決める仕組みを作ります。

基本用語の整理

用語 意味 計算方法
日販数 1日あたりの平均販売数 月間販売数 ÷ 30
リードタイム 発注〜FBA納品完了までの日数 上記の各工程合計
リードタイム中の需要 リードタイム期間中に売れる見込み数 日販数 × リードタイム日数
安全在庫 需要変動やリードタイム遅延に備えた余裕分 日販数 × 安全日数
発注点 この在庫数を切ったら発注するライン リードタイム中の需要 + 安全在庫
発注量 1回に発注する数量 日販数 × 発注サイクル日数

具体的な計算例

以下の条件で計算してみましょう。

前提条件:

  • 月間販売数:30個(日販1個)
  • リードタイム:45日(航空便利用、余裕を持った設定)
  • 安全日数:14日(タイ輸入は変動が大きいため多めに設定)
  • 発注サイクル:60日ごと(約2ヶ月に1回発注)

計算:

リードタイム中の需要 = 1個/日 × 45日 = 45個
安全在庫 = 1個/日 × 14日 = 14個
発注点 = 45個 + 14個 = 59個
発注量 = 1個/日 × 60日 = 60個

つまり、在庫が59個を切ったタイミングで60個を発注するというルールになります。

中国輸入経験者向け:感覚の違い

項目 中国輸入の感覚 タイ輸入で必要な感覚
安全在庫 7日分程度 14〜21日分
発注頻度 月1〜2回 2ヶ月に1回
1回の発注量 少量を高頻度 まとまった量を低頻度
リードタイム見積り 最短で計算 最長+αで計算

鉄則:タイ輸入の安全在庫は中国輸入の2倍を基準にする。 リードタイムが長い分、途中で何か起きたときのバッファが必要です。

販売数別の発注サイクル早見表

月間販売数 日販数 リードタイム中の需要(45日) 安全在庫(14日分) 発注点 推奨発注量(60日分)
10個 0.3個 14個 5個 19個 20個
20個 0.7個 30個 10個 40個 40個
30個 1個 45個 14個 59個 60個
50個 1.7個 75個 24個 99個 100個
100個 3.3個 150個 47個 197個 200個

※リードタイム45日・安全日数14日・発注サイクル60日で算出。商品特性に応じて調整してください。


在庫切れを防ぐための実務テクニック

発注点と発注量を設計しても、タイ輸入には「想定外」が起きやすい要素がいくつかあります。以下のテクニックで在庫切れリスクを最小化しましょう。

テクニック① サプライヤーとの定期コミュニケーション

中国輸入では「発注→待つ→届く」で済むケースが多いですが、タイ輸入では発注後も定期的に進捗を確認することが重要です。

確認タイミング 確認内容
発注直後 発注内容の最終確認、生産開始日の確認
生産開始1週間後 進捗状況、問題の有無
生産完了予定の3日前 納期通りに完了するか、検品スケジュール
出荷前 梱包状態、出荷予定日、追跡番号

ポイント: タイのサプライヤーが普段使っているツールでやり取りすると、レスポンスが早くなります。タイではLINEが主流なので、LINEでのやり取りがおすすめです。メールだけに頼ると返信が遅れがちです。

テクニック② タイの祝日・繁忙期を年間カレンダーに組み込む

タイには生産が完全にストップする期間があります。これを知らずに発注すると、リードタイムが大幅に伸びます。

時期 イベント 生産への影響
4月中旬(約1週間) ソンクラーン(タイ正月) 工場完全停止。前後1週間も稼働低下

特にソンクラーン(4月)は要注意です。 4月に届いてほしい商品は、遅くとも2月中旬には発注を完了させる必要があります。

テクニック③ 複数サプライヤーの確保

1つのサプライヤーに依存すると、そのサプライヤーが生産できなくなった瞬間に在庫が途絶えます

戦略 内容
メイン+サブの体制 メインサプライヤー1社+サブサプライヤー1〜2社を確保
サブへの定期発注 サブにも3〜6ヶ月に1回は少量発注して関係を維持
品質基準の統一 メインと同じ品質が出せるか、サンプルで事前確認

テクニック④ 季節商品・トレンド商品の先行発注

タイ輸入のリードタイムが長い分、季節商品は特に早めの判断が必要です。

販売ピーク 先行発注の目安 具体例
3〜4月(春・新生活) 1月発注 インテリア雑貨、収納用品
7〜8月(夏) 4〜5月発注 天然素材のバッグ、アクセサリー
11〜12月(年末商戦) 8〜9月発注 ギフト需要のある工芸品、高級雑貨

中国輸入との違い: 中国なら1ヶ月前の発注で間に合うことも多いですが、タイ輸入では2〜3ヶ月前に動くのが基本です。


過剰在庫を防ぐためのポイント

在庫切れの反対に、仕入れすぎて在庫が余るリスクもあります。タイ輸入は1個あたりの仕入れ単価が高いケースが多く、過剰在庫のダメージは中国輸入以上です。

ポイント① 販売データに基づく適正発注量

「売れそうだから多めに仕入れておこう」は危険です。必ず実際の販売データに基づいて発注量を決めてください。

販売実績 推奨発注量 理由
月10個で安定(2ヶ月以上) 20〜30個 2〜3ヶ月分でちょうどよい
月10〜20個で変動あり 20〜40個 下限値ベースで計算し、安全在庫で吸収
月30個以上で安定 60〜90個 回転が速いなら3ヶ月分まで許容
販売開始から1ヶ月未満 テスト追加分のみ データ不足。大量発注は厳禁

ポイント② 高単価商品特有の在庫リスク

タイ輸入の差別化商品は売価3,000〜10,000円以上になることも多く、在庫1個あたりに寝るキャッシュが大きいのが特徴です。

計算例:在庫金額のインパクト

【中国輸入】仕入れ単価300円 × 在庫100個 = 在庫金額 30,000円
【タイ輸入】仕入れ単価2,000円 × 在庫100個 = 在庫金額 200,000円

同じ100個の在庫でも、タイ輸入は約6.7倍のキャッシュが寝ることになります。だからこそ、在庫消化期間は最長3ヶ月以内を厳守してください。

ポイント③ FBA長期在庫保管手数料への注意

AmazonのFBA長期在庫保管手数料は、在庫回転が遅い商品にとって無視できないコストです。

条件 手数料
271日〜365日保管 通常の保管手数料に加え、追加手数料が発生
365日超 さらに割増の長期保管手数料が発生

タイ輸入の高単価商品はサイズも大きい傾向があり、保管手数料が高くなりやすいです。FBAへの納品数は「2ヶ月分の販売見込み」を目安とし、残りは自社倉庫や代行業者の倉庫に保管するのも有効な戦略です。

実務テクニック: FBAに2ヶ月分を納品し、残りをバンコクパスポートの倉庫に保管。FBA在庫が減ったタイミングで追加納品を依頼する、という分割納品の活用も検討してください。


よくある質問

Q. タイ輸入で航空便と船便、どちらを使うべきですか?

商品の単価・サイズ・緊急度で使い分けるのが基本です。

条件 推奨輸送方法 理由
売価5,000円以上の高単価品 航空便 在庫切れの機会損失が大きい。速さ優先
小型・軽量品 航空便 送料の単価差が小さい
大型・重量品 船便 航空便だと送料負けする
初回仕入れ・テスト販売 航空便 まず早くFBAに納品して販売データを取りたい
安定して売れている定番品 船便 リードタイムを織り込んだ発注サイクルが組める

多くのセラーは、初期は航空便中心→販売が安定したら船便にシフトという流れをたどります。

Q. 発注点の計算に使うリードタイムは、最短と最長どちらで計算すべきですか?

最長に近い値で計算してください。 リードタイムは短くなる分には在庫が余るだけ(多少のバッファになる)ですが、長くなった場合は在庫切れに直結します。タイ輸入では生産遅延が起きることも珍しくないため、「想定リードタイム+1週間」で計算するくらいがちょうどよいです。

Q. 売上が安定しない商品の発注量はどう決めればいいですか?

過去3ヶ月の月間販売数のうち、最も少ない月の数字をベースに計算してください。 楽観的な数字で発注すると過剰在庫になります。

例:直近3ヶ月の販売数が 25個、30個、20個 の場合
→ 最小値の20個をベースに発注量を計算
→ 発注量 = 20個 ÷ 30日 × 60日 = 40個

安全在庫で販売増には対応できるため、発注量は控えめ、安全在庫で変動を吸収するのがタイ輸入のセオリーです。

Q. リピート発注のたびにサンプル確認は必要ですか?

毎回のサンプル確認は不要ですが、定期的な品質チェックは必須です。 具体的には以下のルールがおすすめです。

状況 対応
初回〜3回目の発注 毎回、検品で品質を確認
4回目以降(品質安定) 抜き取り検品(全数の10〜20%)
サプライヤーが製法や材料を変更した場合 必ずサンプル確認してから本発注
半年以上発注が空いた場合 サンプル確認を推奨

バンコクパスポートがサポートできること

タイ輸入の在庫管理は、リードタイムの正確な把握サプライヤーとの密なコミュニケーションが鍵です。バンコクパスポートでは、在庫管理・発注サイクルに関連する以下のサポートを提供しています。

サポート内容 詳細
発注代行・進捗管理 発注から出荷まで、サプライヤーとのやり取りを代行。生産進捗を定期報告
検品サービス 日本人スタッフ常駐の検品チームが、出荷前に品質チェックを実施
倉庫保管・分割納品 バンコク倉庫での在庫保管に対応。FBAへの分割納品で長期保管手数料を抑制
複数サプライヤー管理 メイン+サブの体制構築をサポート。サプライヤー開拓・品質比較もお任せ
国際物流手配 航空便・船便の最適な使い分けを提案。通関手続きもワンストップで対応

「在庫管理は自分でやれるけど、タイのサプライヤーとのやり取りや進捗管理が大変」という声をよくいただきます。発注・生産管理・検品・物流をバンコクパスポートに任せれば、セラーは販売とマーケティングに集中できます。


まとめ

タイ輸入の在庫管理は、中国輸入の経験がそのまま使える部分と、タイ特有の事情に合わせて調整が必要な部分があります。

  1. リードタイムは中国の約1.5〜2倍 – 航空便で1〜2ヶ月、船便で1.5〜2.5ヶ月を見込む(OEM生産の場合)
  2. 安全在庫は中国輸入の2倍を基準にする – リードタイムの変動が大きいため、14〜21日分を確保
  3. 発注点と発注量を数字で管理する – 感覚ではなく、日販数×リードタイム+安全在庫の計算式で運用
  4. タイの祝日・繁忙期を年間カレンダーに組み込む – 特にソンクラーン(4月)は2ヶ月前に動く
  5. 過剰在庫は在庫消化期間3ヶ月以内で管理 – 高単価商品はキャッシュインパクトが大きい
  6. 複数サプライヤーと分割納品を活用する – リスク分散とFBA手数料の最適化

中国輸入で培った在庫管理のスキルは、タイ輸入でも間違いなく武器になります。違いを理解し、パラメータを調整するだけで、同じフレームワークが使えます。 この記事の計算式と早見表を参考に、自社商品に合った発注サイクルを設計してみてください。


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本記事の情報は2026年3月時点のものです。市場環境・規制は変更される場合がありますので、最新情報は公式機関または専門家にご確認ください。

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