ボーベー市場の紹介
ボーベー市場(Bo Bae Market)は、バンコクの中華街近くに位置する、タイで最も歴史のある衣料品卸売市場の一つです。特に子供服やカジュアルウェア、制服類の卸売りでは、タイ国内でも指折りの規模を誇ります。
プラトゥーナムやチャトゥチャックといった他の主要市場と比べ、ボーベー市場の特徴は「純粋な卸売市場」という点にあります。一般の観光客向けの商業施設化が進む他の市場と異なり、ボーベー市場は現在でも卸売取引を中心とした商業エリアとしての性格を強く残しています。
市場は大きく分けて、昼間営業の「ボーベー・タワー」と、夜間に営業する「ストリートマーケット」の2つのエリアで構成されています。特に夜市は、タイ全土から集まるバイヤーで賑わい、独特の活気ある雰囲気を作り出しています。
価格帯は総じてバンコク市内の他の市場よりも安価で、特に子供服やカジュアルウェアでは、タイで最も競争力のある価格を提供しています。ただし、アパレル商品の種類はプラトゥーナムほど多様ではなく、より実用的な衣料品に特化している点が特徴です。
この記事では、ボーベー市場の詳細な利用方法から、効率的な買い付けのコツまで、実践的な情報をご紹介していきます。
ボーベー市場の歴史と背景
ボーベー市場は1927年頃、タイ系中国人の商人たちによって設立されました。当初は、ココナッツウォーター、お茶、コーヒーなどの飲料や、様々な農産物を取り扱う市場として始まりました。
市場の大きな転換期となったのは第二次世界大戦期で、取扱商品の中心が古着へと移行していきます。特に戦争で亡くなった人々の衣類を取り扱うことから始まった古着取引は、市場の性格を大きく変えることとなりました。
1970年代後半になると、タイの経済発展と共に市場も大きく成長し、古着だけでなく新品の衣料品も取り扱うようになっていきました。1980年代には現在のシンボルとも言える「ボーベー・タワー」が建設され、従来の路上市場に加えて、常設の室内型商業施設としての機能も備えるようになりました。
現在のボーベー市場は、昼夜を通じて営業する総合的な衣料品卸売市場として、特に以下の点で重要な役割を果たしています:
- タイ国内の小売業者への供給基地
- 近隣諸国からのバイヤーの仕入れ拠点
- 子供服の卸売りにおける中心的存在
他の市場が観光地化していく中で、ボーベー市場は一貫して卸売取引を主軸とした市場としての性格を維持し続けており、現在でもタイの衣料品流通における重要拠点として機能し続けています。
アクセス方法
ボーベー市場はバンコク旧市街、中華街(ヤワラート)の近くに位置しています。主に以下の交通手段でアクセスが可能です。
センセープ運河ボート利用
センセープ運河のボートサービスは、バンコク市内の交通渋滞を避けるための便利な交通手段です。
■ 最寄りの船着き場
ボーベー船着き場(Tha Bo Bae)が市場の目の前にあります
■ 主要船着き場からのアクセス
プラトゥーナムからボーベーまで約10分
アソークからボーベーまで約15分
■ 運賃と運行時間
運賃:距離に応じて10-20バーツ程度
運行時間:平日:05:30~20:30、土日祝:06:00~19:00 *ラッシュ時は約5分間隔で運行
■ ボート利用の利点
市内の交通渋滞を回避可能
運賃が安価
プラトゥーナム市場からの移動に便利
バンコクの水上交通を体験できる
タクシー・配車サービス利用
タクシーやGrabを利用する場合は、以下のように伝えると確実です:
目印:「Bo Bae Tower」
タイ語:「ตลาดโบ๊เบ๊」(タラート・ボーベー)
英語:「Bo Bae Market」
市場の構造と主要エリア
ボーベー市場は昼市場と夜市場という、時間帯によって異なる特色を持つ2つの市場で構成されています。
昼市場(ボーベー・タワー)
昼市場の中心となるボーベー・タワーは、7階建ての常設商業ビルです。1階から6階までが商業スペースとなっており、エレベーターとエスカレーターを完備しています。
販売されている商品は主にカジュアルウェア、子供服、Tシャツ類、その他エスニック衣料品やTシャツやポロシャツの専門店が並び、スポーツウェア、下着類、アクセサリー、服飾雑貨を扱う店舗など多種多様な店舗が並んでいます。
夜市場(ストリートマーケット)
夜市場は深夜1時頃から朝8時頃にかけて、ボーベー・タワー周辺の路上で営業されます。夜市場はボーベータワーの東側、運河沿いのクルンカセム通りで営業されています。センセーブ運河に架かる橋を渡り、ラマ1世通りと交差する辺りまで、通りの両サイドに露店が立ち並びます
営業は深夜1時頃から店舗の設営が始まり、深夜2時頃になると本格的な営業が開始されます。レディース衣料、Tシャツ、雑貨、ジーンズ、バッグなど様々な商品を扱う露店が軒を連ねています。
■ 取引形態の違い
昼市場では小売と卸売の両方に対応しており、比較的少量からの購入が可能です。一部の店舗ではクレジットカードの利用も可能となっています。一方、夜市場は完全な卸売市場として機能しており、基本的にまとめ買いが前提となります。取引は現金決済が基本で、より実務的な商談が行われています。
昼夜で異なる特性を持つことで、様々な規模のビジネスニーズに対応できる柔軟性を備えているのが、ボーベー市場の大きな特徴と言えます。一般的な小売購入から大規模な卸売取引まで、目的に応じて市場を使い分けることが可能です。
主な取扱商品
ボーベー市場は主にアパレル製品を扱う市場ですが、いくつかの特徴的な商品カテゴリーがあります。
子供服
ボーベー市場の最大の特徴は、子供服の品揃えの豊富さです。新生児から中高生までの幅広い年齢層に対応しており、普段着からパーティードレス、キャラクター商品、学生服まで取り揃えています。特に価格の安さと豊富なサイズ展開は、タイ国内でも特筆すべき点です。
制服・ユニフォーム
制服類は当市場のもう一つの重要な商品カテゴリーです。学校関連では幼稚園から高校までの制服、体操服、付属品を扱っています。また職業用では、ホテルスタッフ、レストラン従業員向けの制服、一般的な事務服や作業着まで幅広く取り扱っています。多くの店舗でカスタマイズにも対応可能です。
カジュアルウェア
メンズ、レディース共に豊富な品揃えを誇ります。特にTシャツ類は種類が豊富で、デニム製品やスポーツウェアなども充実しています。実用的なデザインと手頃な価格帯が特徴です。
下着類
メンズ・レディースの下着をはじめ、ルームウェアやパジャマ類、靴下なども取り扱っています。品質は実用的なものが中心で、価格も手頃です。
アクセサリー・服飾雑貨
ベルトや帽子、バッグ、財布などの実用的な服飾雑貨を中心に取り扱っています。装飾品なども豊富に揃っており、アパレル商品とのセット買いに便利です。
■ 価格帯の特徴
価格帯は商品によって異なりますが、一般的に子供服は30-200バーツ、Tシャツ類は50-150バーツ、ユニフォームは150-500バーツ程度です。アクセサリー類は20-100バーツ前後が中心です。卸売の場合は、購入数量に応じてさらなる値引きが可能です。
■ 品質の特徴
ボーベー市場の商品は、実用性を重視した作りとなっています。デザイン性よりも耐久性を重視し、価格に見合った適正な品質を提供しています。大量生産品が中心となるため、安定した品質が特徴です。
■ 仕入れ時の注意点
仕入れの際は、サイズ展開や色違いの在庫状況、追加発注の可否などを事前に確認することが重要です。また、大量購入の際は必ず品質検品を行うことをお勧めします。特に子供服や制服は、着用者の年齢や用途に応じた適切な品質チェックが必要です。
価格帯と取引について
■ 基本的な価格体系
ボーベー市場の価格帯は、プラトゥーナム市場と比較してさらに安価な設定となっています。特に夜市では、タイ全土の小売業者向けの卸売価格で商品が提供されています。基本的に、同じ商品でも昼市場より夜市場の方が安価で購入できます。
■ 昼市場での取引
昼市場となるボーベー・タワー内では、一般的な小売価格と卸売価格の両方が設定されています。小売での購入も可能ですが、通常3着以上からは卸売価格が適用されます。店舗によって多少の違いはありますが、10着以上の購入でさらなる値引きが期待できます。
■ 夜市場での取引
夜市場は完全な卸売市場として機能しています。一般的に10着以上からの購入が基本となり、購入数が増えるほど単価は下がっていきます。特に100着以上のまとめ買いでは、大幅な値引きが可能です。ただし、1着だけなどの小売での購入は難しい場合が多いです。
■ 支払い方法
昼市場では一部の店舗でクレジットカードが利用可能ですが、夜市場では現金取引が基本となります。特に夜市での取引は、現金払いが前提となっているため、事前に十分な現金を用意しておく必要があります。外貨両替所は市場内にはないため、事前の両替をお勧めします。
■ 価格交渉について
価格交渉は基本的に可能です。ただし、すでに卸売価格で提示されている場合は、大幅な値引きは期待できません。交渉の際は以下の点が重要となります。
購入数量は交渉の重要なポイントとなります。まとまった数量を購入する場合は、最初にその旨を伝えることで、より良い条件を引き出せる可能性があります。
定期的な取引を前提とする場合は、その点を説明することで、初回から良い条件を提示してもらえる場合があります。特に夜市では、継続的な取引関係を重視する傾向があります。
■ 取引時の注意点
商品の検品は必ず行いましょう。特に大量購入の場合は、サンプルをしっかりと確認することが重要です。不良品の交換に関する条件も、事前に確認しておく必要があります。
在庫の確認も重要です。特に人気商品は在庫の変動が大きいため、大量発注の場合は納期と在庫状況を必ず確認しましょう。追加発注の可能性がある場合は、その際の価格条件についても確認しておくことをお勧めします。
お勧めの買い付け時間帯
昼市場の時間帯
昼市場となるボーベー・タワーは朝6時から夕方6時まで営業しています。最も効率的な買い付けが可能な時間帯は、開店直後の午前中です。この時間帯は商品の品揃えが最も充実しており、店舗スタッフにもゆとりがあるため、じっくりと商品を選ぶことができます。
午後2時から4時頃は比較的空いている時間帯となります。タイの暑い日差しを避けて買い付けを行いたい場合は、この時間帯がお勧めです。ただし、人気商品は午前中に売り切れてしまう可能性もあるため、特定の商品を目当てにする場合は朝一番での訪問が賢明です。
夜市場の時間帯
夜市場は深夜1時頃から朝8時頃まで営業しています。もっとも活気があり、品揃えが充実しているのは深夜2時から朝5時までの時間帯です。この時間帯には、タイ全土から集まったバイヤーたちで市場は最も賑わいを見せます。
特に深夜2時から3時の間は、新商品が続々と並び始める時間帯です。この時間帯であれば、最も良い商品を選ぶことができます。また、早朝4時から5時は、遠方からのバイヤーが帰り始める時間帯となるため、比較的ゆっくりと商品を見ることができます。
曜日による違い
平日と週末では、市場の混雑状況が大きく異なります。平日の方が比較的空いており、落ち着いて買い付けができます。特に火曜日から木曜日は、最も理想的な買い付け日となります
週末は一般客も増えるため、昼市場は非常に混雑します。一方、夜市場は曜日による変動が少なく、むしろ日曜日の深夜から月曜の早朝にかけては、新商品の入荷が多い傾向にあります。
季節による変化
タイの祝日や特別なイベント時期は、営業時間や混雑状況が大きく変わることがあります。特にソンクラーン(タイ正月)期間中は、営業時間が変更されたり、一部の店舗が休業したりする場合があります。また、雨季(6月~10月)の夜市は、スコールの影響を受けやすいため、天候のチェックが重要です。
このように、ボーベー市場での効率的な買い付けには、適切な時間帯の選択が重要です。目的に応じて、昼市場と夜市場を使い分けることで、より効果的な買い付けが可能となります。
買い付けの実践的アドバイス
■ 準備の重要性
買い付けを効率的に行うためには、事前の準備が非常に重要です。目的の商品、予算、数量などを明確にしておくことで、限られた時間を最大限に活用することができます。特に夜市場では時間が限られるため、より入念な準備が必要となります。また、タイ語での基本的な数字や値段の言い方を覚えておくと、よりスムーズな取引が可能です。完璧な会話力は必要ありませんが、数字と金額だけでも理解できると、大きなアドバンテージとなります。
■ 必要な持ち物
財布は現金用とその他用の2つを用意することをお勧めします。特に夜市場では現金取引が基本となるため、大金を持ち歩く必要があります。現金は必要分を分散して持ち歩くことで、安全に買い付けを行うことができます。
商品の記録用として、スマートフォンのカメラやメモ帳は必須です。特に商品の型番、色、サイズ、価格などは必ず記録に残すようにしましょう。また、電卓があると価格計算や為替換算がスムーズに行えます。
■ 効率的な買い回り方
まずは市場全体を一通り見て回り、商品の品揃えや価格帯を確認することをお勧めします。特に同じような商品を扱う店舗が複数ある場合は、価格や品質を比較検討することで、より良い取引条件を見つけることができます。
商品を決定したら、サンプルチェックを丁寧に行います。特に大量発注の場合は、商品の縫製や素材の確認が重要です。また、サイズ展開や色展開についても、必ず確認するようにしましょう。
■ コミュニケーションのコツ
店舗スタッフとの良好な関係づくりは、継続的な取引において非常に重要です。特に定期的な買い付けを検討している場合は、最初の取引から丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。
価格交渉の際は、強引な値下げ交渉は避け、お互いにとって良い条件を見つけることを心がけます。特に夜市場では、継続的な取引を前提とした関係づくりが重要となります。
■ トラブル防止のために
取引条件は必ず書面で残すようにしましょう。特に価格、数量、納期、不良品の対応などの重要事項は、メモやメールで記録を残すことをお勧めします。
支払い条件や配送方法についても、事前に明確にしておくことが重要です。特に大量発注の場合は、分割納品や分割支払いなどの条件も含めて、詳細を確認しておきましょう。
これらの点に気を配ることで、スムーズで効率的な買い付けが可能となります。特に初めての方は、小規模な取引から始めて、徐々に取引規模を拡大していくことをお勧めします。
周辺施設情報
サンペーン市場
ボーベー市場からほど近い場所に位置するサンペーン市場は、バンコク最古の中華街(ヤワラート)にある卸売市場です。約1キロメートルに渡って続く細長い市場で、アクセサリーや服飾雑貨、おもちゃ、生地や服飾資材など、様々な商品を扱っています。
サンペーン市場は特に服飾雑貨やアクセサリーの品揃えが豊富で、ボーベー市場での衣料品の買い付けと組み合わせることで、より幅広い商品構成が可能となります。価格帯もリーズナブルで、こちらも卸売価格での購入が可能です。
クロントム市場
電化製品や車関係のパーツ類、アクセサリーを専門に扱う市場です。特に電卓や測定用具など、買い付けに必要な道具も安価で販売されています。また、SIMカードや携帯電話関連のアイテムも充実しています。
まとめ
ボーベー市場の特徴とポイント
ボーベー市場は1927年に設立され、現在ではタイを代表する衣料品の卸売市場として確固たる地位を築いています。特に子供服や制服類においては、タイで最も重要な卸売市場となっています。
昼夜で異なる市場の特性を持つことも、ボーベー市場の大きな特徴です。昼間のボーベー・タワーでは比較的少量からの購入が可能で、夜市では本格的な卸売取引が行われています。この二面性により、小規模から大規模までの様々なビジネスニーズに対応できる柔軟性を備えています。
プラトゥーナム市場との使い分け
プラトゥーナム市場が最新のファッショントレンドや多様な商品を扱う総合的な市場であるのに対し、ボーベー市場は実用的な衣料品に特化した市場という特徴があります。特に子供服、制服、カジュアルウェアについては、ボーベー市場の方がより安価で豊富な品揃えとなっています。
また、プラトゥーナム市場が観光客も意識した商業施設としての性格を持つのに対し、ボーベー市場は純粋な卸売市場としての性格を強く持っています。そのため、大量仕入れを検討する場合は、ボーベー市場の方が適していると言えます。
効果的な買い付けのために
ボーベー市場での効果的な買い付けには、目的に応じた時間帯の選択が重要です。一般的な買い付けであれば昼市場、大量仕入れを検討する場合は主にローカル向けですが夜市場の利用も検討してみてください。
特に初めての方は、まず昼市場で商品や価格帯の調査を行い、その後必要に応じて夜市場を利用するという段階的なアプローチをお勧めします。継続的な取引を視野に入れている場合は、信頼できる取引先との関係構築を重視することが重要です。
このように、ボーベー市場は伝統的な卸売市場としての性格を維持しながら、現代のビジネスニーズにも対応した実用的な市場として機能しています。その特性を理解し、適切に活用することで、効果的な買い付けが可能となります。
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