タイ仕入れで偽ブランド品を掴まないために|バンコクの倉庫から1.8万点が押収された事件と、4つのポイント【2026年版】

バンコクの倉庫に積まれた衣類と、タグを確認する手

8月25日、バンコクの倉庫にタイの捜査機関が入りました。

入ったのはDSI(特別捜査局・法務省の下にある重大事件専門の捜査機関)。裁判所の捜索令状を持って入った先は、バンコク都ワントーンラーン区にある倉庫でした。押収されたのは衣類、帽子、バッグなど約18,678点、被害額はおよそ2,000万バーツ。1バーツ4.8円で換算すると9,600万円ほどの規模です。

気になったのは、何のコピーだったかです。報道に並んだブランド名は、ハーレーダビッドソン、ナイキ、ミッキーマウス(ディズニー)、BMW。

ルイ・ヴィトンでもロレックスでもありません。ロゴの入ったTシャツ、キャップ、トートバッグです。プラトゥーナムの卸で1枚80バーツで積まれていても、古着ベールを開けたら混ざっていても、誰も驚かない類の商品です。

弊社はバンコクで仕入れ代行をしていて、日本のお客様に同行して問屋街を回ります。この手の商品は毎週のように目に入ります。今回の記事は、その売り場で見ているものを前提に「知らずに掴んだらどこで何が起きるのか」を整理しました。


目次

まず、何が押収されたのか

事件の概要を先に押さえておきます(2026年8月時点・報道ベース)。

項目内容
摘発日2026年8月25日
場所バンコク都ワントーンラーン区クローンチャオクンシン地区の倉庫
押収品衣類、帽子、バッグなど約18,678点
被害額約2,000万バーツ(約9,600万円)
対象ブランドハーレーダビッドソン、ナイキ、ディズニー、BMW

タイのこの手の摘発でよく報道されるのは、高級ブランドのコピーです。2024年にはバンコク中心部のMBKセンターで11の店舗と倉庫が一斉に捜索され、ルイ・ヴィトン、シャネル、グッチ、ディオールなどのコピー品が約2万点押収されました。

その2件を並べると、性格がまるで違うことが分かります。

MBKのケースは「観光客が偽物と分かって買う」市場です。日本の物販事業者がそこから仕入れることは、まずありません。

一方で今回の倉庫は、ナイキのロゴが入ったTシャツとディズニー柄の雑貨です。分かって買う商品ではなく、分からずに買える商品が1.8万点あったことになります。


なぜ今、この4ブランドなのか

古着店に並ぶヴィンテージTシャツと高い値札

押収されたブランドをもう一度並べます。ハーレーダビッドソン、ディズニー、ナイキ、BMW。

古着をやっている人なら、この並びに見覚えがあるはずです。ヴィンテージTシャツで値が付く代表格が、そのまま入っています。

ここ数年で、古着の相場は明らかに変わりました。世界の中古アパレル市場は2029年に3,670億ドル規模、年10%成長という予測が出ています(ThredUp 2025 Resale Report)。日本の相場も同じ方向です。数年前まで2〜3万円だったニルヴァーナのプリントTが、2024年には50〜60万円で取引されるようになりました。

需要が伸びる一方で、供給は増えません。80年代や90年代に作られたTシャツの総量は決まっていて、市場に出てくる分は毎年減っていきます。買いたい人だけが増えれば、値段は上がります。

値段が付くところには、作る側が現れます。

倉庫に1.8万点のロゴ入りTシャツと帽子とバッグが積まれていた理由も、ここです。押収リストに並んだブランドは、古着の値付け表とそのまま重なります。

そして、こうした商品が「新品のコピー」の顔で売られるとは限りません。洗って、色を抜いて、プリントを割って、古着の棚に並べる。この加工が入ると、判別はぐっと難しくなります。


タイの問屋街で、コピー品はどこに混ざるか

バンコクの衣料問屋街の通路。無地とプリントものが同じ棚に並ぶ

輸入物販の世界で偽ブランドの話をすると、たいてい中国輸入の話になります。実際、日本の税関が差し止めた知的財産侵害物品の仕出国は、2025年(令和7年)実績で中国が82.8%を占めています。タイは上位4カ国(中国・ベトナム・韓国・台湾)に入っていません。

だから統計だけ見れば、タイ仕入れは相対的に安全な部類です。

ただ、リスクの大きさは頻度では測れません。当たったときに事業がどうなるかで測るものです。そして、タイの問屋街にコピー品が置かれていないわけでもありません。

デニムに詳しい人なら、タイ製のフェイクという言葉を聞いたことがあると思います。これは噂の域を出ない話ではありません。

2012年9月、DSIと知的財産訴訟局がノンタブリー県の3か所を捜索し、リーバイスのラベルが付いたジーンズ3,954本と複数のミシンを押収しています。押収品の価値は500万バーツ超。リーバイス側の告発を受けて、DSIが製造拠点と首謀者を特定するまでに約2ヶ月かかりました。売っていた店ではなく、作っていた家です。

2022年8月には、バンコクのバンボン地区の倉庫で偽ブランドジーンズ6万本超が見つかりました。DSIとして当時最大級の押収で、こちらは近隣国から輸入されたもの。25%の輸入関税も逃れていました。

作る側も、運び込む側も、タイにはずっといます。

摘発されるのは今回のような1件だけではありません。財務省・商務省・法務省・国家警察・税関が連携した取り締まりでは、2025年10月からの半年間で332件、130万点超が押収されています。被害額は約23億バーツ(約110億円)。タイ政府が2026年4月に公表した数字です。

現場でどこに混ざるか、具体的に挙げます。

問屋街のアパレル(プラトゥーナム、ボーベー、サンペン)
スポーツブランドのロゴが入ったTシャツ、キャップ、ジャージ。ノーブランドの棚と同じ通路に、同じ値段で並んでいます。売り子は「いいデザインだよ」としか言いません。ブランドの話をしているつもりがない、というのが実情に近いです。

チャトゥチャックのキャラクター雑貨
一点モノを掘る楽しさがある市場ですが、キャラクターもののステッカー、ぬいぐるみ、パロディTシャツも同じくらい多いです。日本のアニメのキャラを少し崩した絵も、ここに含まれます。

日本のキャラクターも摘発されています。2025年2月、DSIはバンコクのバンケー地区3か所を捜索して、ハローキティ、マイメロディ、クロミ、シナモロールといったサンリオのキャラクターと、ミッキーマウスやくまのプーさんの商品を5〜10万点押収しました。

古着ベールのプリントT
これがいちばん厄介です。80〜90年代のディズニー、NFL、バンドTには、当時の正規ライセンス品と、当時から出回っていた非正規品(ブート)が両方あります。ベールを開けて出てきた1枚がどちらなのかは、タグを見なければ分かりません。見ても分からないこともあります。

生地問屋のキャラクター柄
パフラットで生地を買ってオリジナルの服やポーチを作る、というルートは人気があります。ただ、キャラクター柄の生地は著作権の対象です。生地として売られていることと、その生地で作った商品を販売してよいかは別の話になります。

OEM工場
「このロゴを入れてほしい」と頼めば、入れてくれる工場はあります。断らない工場があるという事実は、こちらの判断を代わりにやってくれる人はいない、という意味でもあります。


引っかかる4つの関門

税関の検査台で段ボールを開けて中身を確認する場面

コピー品を仕入れてしまったとき、止められるポイントは1つではありません。

① タイ側:買う側も対象になる

タイの商標法(B.E.2534)は、作る行為だけを罰する法律ではありません。110条が輸入・販売・販売のための所持まで対象にしています。罰則は偽造で4年以下の懲役または40万バーツ以下の罰金、模倣で2年以下または20万バーツ以下。

買い付けてホテルの部屋に積んでいる段階が、これに当たり得ます。

② 日本の税関:荷物ごと止まる

2025年(令和7年)の輸入差止は31,760件。品目別の件数は衣類10,660件、バッグ類7,560件、靴類3,597件が上位で、今回押収された倉庫の中身と重なります。

侵害と認定されれば没収・廃棄。仕入れ代金も輸送費も戻りません。1点だけ紛れていた場合でも、その荷物全体が止まります。

2022年10月の商標法改正で、個人が自分で使うつもりで買った1点でも税関で止められるようになりました。「1点だけなら」は、もう通りません。

③ 日本の商標法:売った時点の話

日本で販売すれば商標権侵害です。10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金(商標法78条)。法人の業務として行われた場合は、法人にも3億円以下の罰金(同82条1項)。

「知らなかった」がどこまで通るかは、期待しないほうがいい領域です。

④ 販売プラットフォーム:アカウントが飛ぶ

刑事罰の手前で、実務上いちばん先に来るのがこれです。メルカリShopsもAmazonも、権利侵害と判断されれば出品削除、繰り返せばアカウント停止まで進みます。

商標権は国ごとに成立します。 タイで堂々と売られていることは、日本で売ってよい理由になりません。アカウントが止まれば、在庫と販路が同時に消えます。


判断に迷うグレーゾーンを整理する

古着のプリントTのタグを一枚ずつ確認する手元

真っ黒なコピー品は誰でも避けられます。実際に困るのは、その手前のグレーなエリアの商品です。

真正品の並行輸入
本物のブランド品を正規代理店以外のルートで輸入して売る行為は、一定の条件を満たせば商標権侵害にならない、というのが日本の最高裁の考え方です(2003年のフレッドペリー事件)。条件は3つあり、外国の商標権者が適法に付した商標であること、日本と外国の商標権者が同一または同視できる関係にあること、日本の商標権者が品質管理できる立場にあることが求められます。

本物だから自由に売っていい、という話ではありません。ルートの説明ができるかどうかが分かれ目になります。

「◯◯風」「パロディ」
ロゴを少し崩す、名前を1文字変える。この手の商品は似ているかどうかで判断されるので、崩してあること自体は守りになりません。むしろ危ない部類です。タイ商標法109条の「模倣」も、日本の商標法の「類似」も、同じ考え方をします。

古着の本物とブート
ブランド古着そのものは何の問題もありません。当時の正規ライセンス品なら、堂々と売れます。判断が要るのは、そのプリントTが当時のライセンス品か、後から作られたものかの部分です。古着屋が見ているのは、だいたいこのあたりです。

  • タグの権利表記(© DisneyOfficially Licensed Product、コピーライトの年)
  • 縫製(80〜90年代のアメリカ製はシングルステッチが多い)
  • タグの生産国表記(MADE IN USACRAFTED WITH PRIDE IN USA
  • プリントの状態(経年のかすれや割れがあるか、べったり乗っているか)

デニムには別の勘所があります。タイのヴィンテージ市場に詳しいディーラーが挙げているのは、赤タブだけを後から縫い付けた「タブ移植」と、トップボタンの裏に 501 の刻印があるもの。後者はほぼ確実に偽物だそうです。

ただ、当の古着屋が「プロでも見分けは難しい」と書く領域です。慣れるまでは分からないと考えてください。

サプライヤーの「本物だよ」
証拠にはなりません。口頭の説明は、税関でもプラットフォームでも通用しません。とはいえ書類を出せる業者もほぼいないので、聞くべきは仕入れルートです。どこから引いた商品かを説明できない相手からは、判断に迷うものを買わない。

なお、個別の商品が侵害に当たるかどうかは、最終的には弁護士・弁理士の領域です。金額の大きい案件や、既に指摘を受けている案件は専門家に相談してください。


現場で使うチェックリスト

市場で商品を写真に撮り、その場で買わずに持ち帰る判断

問屋街の売り場で、その場で判断するための項目です。実際に弊社スタッフがお客様と回るときに見ているポイントを、そのまま並べます。

1. 価格を正規品と比べる
ナイキのTシャツが80バーツで積まれていたら、それ以上考える必要はありません。正規品の卸価格には下限があります。

2. タグとライセンス表記を見る
正規ライセンス品には、ほぼ例外なく権利表記があります。© DisneyOfficially Licensed Product、ブランドの品番タグ。何も付いていない、あるいはタグを切った跡がある商品は、そういう商品です。

3. 信頼できるディーラーから買う
問屋街や古着倉庫で、ライセンスの証明書を持っている業者はほとんどいません。書類を出せと迫っても、たいてい話が止まって終わりです。

現実的なのは、仕入れ先そのもので判断することです。何年やっているか、商品をどこから引いているかを説明できるか、日本人バイヤーが繰り返し買っている相手か、問題が出たときに話が通じるか。同じ倉庫に通って関係を作るほうが、1点ずつ疑うより効きます。

4. 写真を撮って、その場で決めない
迷ったら買わずに写真だけ持ち帰る。ホテルで調べる時間があれば、たいていのことは判別できます。市場の熱気の中で決めた判断は、後から見ると雑です。

5. 見分けられないものは買わない
判断の軸は、自分がその商品の真贋を見分けられるかどうかです。タグも縫製もプリントも読めない商品は、安くても手を出さない。

最初の数回は、ロゴが入っていたら候補から外す運用で十分です。タイ仕入れの主戦場は、もともとノーブランドの雑貨、アパレル、アクセサリー。外しても仕入れられる量はほとんど減りません。見分けられる範囲が広がってから扱うものを増やせば済む話で、慣れないうちに攻める理由はありません。


仕入れ代行をどう使うか

現地スタッフが同行し、売り場でサプライヤーに確認する

最後に、弊社のような仕入れ代行が何をできて何をできないかを、正直に書いておきます。

できないこと:真贋鑑定
弊社の検品は、縫製、染色、汚れ、数量といった品質の検品です。ブランド品の真贋を鑑定する業務ではありませんし、鑑定書を出すこともできません。「代行会社が検品したから本物」という保証にはならない、というのは最初にお伝えしています。

できること:仕入れの段階で候補から外す判断
現地スタッフが同行して売り場を見ていれば、ロゴ入りやキャラクターものはその場で候補から外せます。タイ語で仕入れルートを聞いて、相手の答え方から判断することもできます。弊社が普段から回っている倉庫や問屋へ案内することもできます。買う前の段階で選択肢を絞る。ここが代行を使う実務的な意味です。


まとめ

バンコクの倉庫から押収された1.8万点は、ロゴ入りのTシャツと帽子とバッグでした。物販事業者が普通に手を伸ばす帯です。

整理すると、こうなります。

  • タイ側:作る側だけでなく、販売目的で持っている側も商標法110条の対象になる
  • 日本の税関:2025年の差止は31,760件。品目上位は衣類、バッグ、靴で、押収された倉庫の中身と重なる。1点混ざれば荷物ごと止まる
  • 日本の商標法:販売すれば10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金、法人は3億円以下
  • 販売プラットフォーム:メルカリShopsもAmazonも権利侵害の出品は削除・アカウント停止。商標権は国ごとに成立するので「タイで売られている=日本で売ってよい」にはならない

古着相場が上がっているぶん、作る側の動機も上がっています。ヴィンテージのプリントTを狙うほど、コピーの多い売り場に近づくことになります。

そして、これらは全部避けられます。その商品の真贋を自分で見分けられないなら買わない。 それだけで、初心者が踏む地雷の大半は消えます。

タイ仕入れの本来の強みは、ノーブランドの品質と価格です。エスニック雑貨、タイコットン、シルバーアクセサリー、革小物。ロゴに頼らず売れる商品が揃っているからこそ、わざわざ危ない商品に手を出す理由がありません。

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※本記事の数値・法令は2026年8月時点の情報です。法令・罰則・プラットフォームの規約は改定されることがあります。個別の商品が権利侵害に当たるかどうかの判断は、弁護士・弁理士にご相談ください。バーツ円換算は1バーツ=4.8円(2026年7月の月平均レート)で計算しています。

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